オバマの勝利と黒人問題
アメリカでは黒人問題がいまだに・・・などと言われることも多いが、なんとなく疑問が残りもする。
まず、確かに白人至上主義者がアメリカにいるのは事実である。そうした問題は速やかに解決されるべき問題だとは思うが、でもそういう白人至上主義者ってどう考えても平均的アメリカ人じゃないよね、とも思う。「アメリカにはいまだに根深い黒人差別が・・・」というのは、少なくともこうした白人至上主義者を指して言うのならば妥当ではないだろう。
次に、結果として現れる居住区域の分離(黒人と白人が分かれて暮らす状況)についていうと、これはトーマス・シェリングが“Dyanamic Models of Segregation”において示したように、特別な差別感情はなくとも、結果としての居住区域分離はゲーム理論的に見れば十分妥当性のある帰結である。ゆえに、居住区域をもって単純に差別の存在を示すことにはならないだろう。
なぜこんなうだうだ言うかというと、アメリカでは黒人であるが故の優位性がむしろ働いている気がするからである。要するに「弱者であるが故の特権」というやつである。オバマ当人は「黒人=弱者」のイメージをふりまわすようには見えなかったが、周りのメディアなり国民なりはいまだにそういうイメージに浸かっている気がする。
というのも
オバマの母親って白人だよね
ってことを誰も言わないからそう思うわけなのだが。
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