「審議が尽くされていない」という言い分
「審議が尽くされていない」と言う前に、とりあえず「じゃああなたたちにとって審議が尽くされている状況というのは何なのさ」ということを明らかにしてほしいものなのだが。結局「自分たちの要求が認められている状況が審議が尽くされている状況だ」というあたりに落ち着くなら、最初に意見が違っていた段階で審議が尽くされるわけがないではないか。
確かに審議をすればするほどよりよい案は出てくる可能性は増すだろうが、それはいつでも言える話だ。だから結局無限に審議できない現実の状況においていかなる決定方式をとるかというのが政治学者の向かい合わねばならない問題であって、つまり何らかの時点で審議を打ち切って妥協点を見出すというのが今のところとるべき戦略となる。
審議の意味として法案の問題点の提起というのを考えれば、重要な問題点があるのならそれを提起する時間は山ほどあったわけで、だから審議が尽くされていないとすれば、つまるところ野党がバカバカしい質問を繰り返していて本当に重要な問題点の提起をしそびれたという話になるわけだが、これは明らか野党の失策であって、与党に文句言う筋合いないよねという。
審議によって意見を変えようとしているのかもしれないが、でも変えたら変えたで野党は「方針がぶれている」とか言うに決まってるんだから。というか公約違反がいけないことだとすれば、公約として言ってしまったことはもう意見変えちゃいけないんだから、意見を変えさせようってのは相手に公約違反させようって話になるから、それはどだい無理な要求になってしまうかと。
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