環境問題で日本は「笑いもの」になるのか?
斉藤鉄夫環境相は12日の閣議後会見で、日本が2020年までにどの程度の温室効果ガス削減を目指すかという中期目標について、経団連の御手洗冨士夫会長が11日に日本経済に最も負担の少ない「4%増加」を支持したことを受け、「(4%増では)世界の笑いものになる」と反論した。さらに、「低炭素社会の先頭をいく技術を持った日本がまったく後ろ向きの目標を出すことは、日本の地位をおとしめる」との考えを改めて強調した。
中期目標をめぐっては、検討委員会が提示した1990年比で4%増~25%減とする6案をもとに、国民から意見を聞いた上で政府が6月中に決定する。経済重視派は、大幅削減は家計や経済活動への負担が大きすぎるとし、現状の削減努力を継続する4%増案を支持。一方、環境保護派は待ったなしの温暖化防止のためには最も厳しい25%減の選択肢もやむをえないとしている。
斉藤環境相は、(1)科学の要請(2)中国など途上国を含めた1つの国際的な枠組みづくり(3)日本の社会産業構造の変革を促す-の3つの観点から「野心的な中期目標が必要である」との見解を述べた。(産経ニュース)
とりあえず、何もせずに「笑いものになる」か否かが重要なら、いくらでも高い削減目標を課してしまえばよいのであって、論拠にならない。
というか、「低炭素社会の先頭をいく技術を持った日本がまったく後ろ向きの目標を出すことは、日本の地位をおとしめる」ってのはロジックが逆で、本当の事情は「低炭素社会の先頭をいく技術」を日本は持っている「から」、日本は「後ろ向きの目標を出さざるをえない」わけで。
というのも、日本は1990年時点で相当に環境配慮のシステムが進んでいた訳で、そのすでに簡単に削減できるところは削減してしまった日本と、まだ環境対策の遅れていたヨーロッパ(特に東欧の状況はひどかったし、西欧でさえ微妙な状況である)を同列に、ただ割合というだけで比較しようと言うのが間違っている訳で、だから世界が日本を「笑う」としても、それはそのような背景を知らないからであり、日本の環境相の役目はそうした誤解を解くことにある。もしそのようなことを理解していない大臣だとしたらそれこそ致命的だと言えるだろう。
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