法務大臣が法を守らない件
過去数人の法務大臣がそうだったけど、今回任命された千葉法務大臣も、死刑執行について慎重にしていくと発言している。(読売新聞)
個人の信条として死刑廃止を訴えるのは自由だし、死刑廃止の法案を出そうとするのも自由なんだけど、なんで大臣の職務にまでそれを延長してしまうのか、という。
と
りあえず刑事訴訟法第四百七十五条第二項「前項の命令は、判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。」という義務がきちんと存在するわけ
で、何点かの但し書き(同および第四百七十九条など)は存在するけど、それ以外の場合についての行政に付託されている裁量権は「六箇月以内にいつ執行するか」しか存在しない。(例外的な場合として、現在死刑廃止法案が審議され間もなく通過する状況においての執行先延ばしは認められる余地はあるだろうが、そ
れはその先延ばしが事後的に肯定されるからであり、明らかに現在はそのような状況ではない)だから、「慎重に」を六箇月の枠を超えて実行したらそれは違法
だといえよう。
大体、法の規定を飛び越えた裁量権が存在するなどとしたら、日本国憲法第六条「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する」とあるから天皇に首相任命権があるなどとなってしまうではないか。
なお、上記記事によると
法相は、自らが「死刑廃止を推進する議員連盟」のメンバーであることも明らかに。死刑制度の今後のあり方にも言及し、「これだけ死刑の存置・廃止について 議論があり、終身刑の導入についての議論もある。裁判員制度の導入で多くの皆さんが深い関心を抱いていると思うので、ぜひ広い国民的な議論を踏まえて、道を見いだしていきたい」と述べた。
とのことだが、もちろん大臣として国会や内閣で死刑廃止論議を行うのは自由だが、死刑執行そのものにつ
いては、現行法が改正されるまでは現行法に従う義務を法務大臣は有している。「多くの皆さんが深い関心を抱いている」から国会で審議するのならよいが、立法のプロセスをすっ飛ばして勝手に行政の方に持ち込んだら「何のための法律か」ということになってしまうだろう。
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