相対的貧困に意味はあるか
日本の相対的貧困率が政府主導で調べて発表された(毎日jp)
長妻昭厚生労働相は20日、国民の貧困層の割合を示す指標である「相対的貧困率」が、06年時点で15.7%だったと発表した。日本政府として貧困率を 算出したのは初めて。経済協力開発機構(OECD)が報告した03年のデータで日本は加盟30カ国の中で、4番目に悪い27位の14.9%で、悪化してい る。日本の貧困が先進諸国で際立っていることが浮き彫りとなった。
最後から二文目まではデータだからまあいいけど、一番最後で猛烈な飛躍がある気がする。
大体、「相対的」貧困ってことは、周りに金持ちが多かったら、自分もきちんと暮せたとしても貧困という扱いになるわけで、別にさしたる問題ではないだろうし。
もちろん日本に絶対的な意味で(要するにまともにものも食べれないような人がいるという意味で)貧困が存在するのは事実だし、それは解決しなきゃいけないけど、そういう人数は実は先進国中でものすごく低い。
「十分な所得がないために生活必需品を買うことが出来なかった回答者の割合」という統計データがあるのだが、これをみると、西欧諸国と比較して日本はこの割合が群を抜いて低い。もちろんこれをゼロにすべきというのはその通りで、割合が少なくても対策はすべきなのだが、「先進国で際立って日本では貧困が多い」というのは明白に誤っている。
長妻は
長妻厚労相は「OECDの中でもワーストの範ちゅうに入っており、ナショナルミニマム(国が保障する最低限度の生活)と連動して考えたい。来年度から支給する子ども手当で貧困率がどう変化するかもシミュレーションしていく」と述べた。
らしいが、「ナショナルミニマム」を生活必需品の提供と考えれば、ナショナルミニマムは日本は先進国中で極めて達成されているのである。
こうした点を踏まえずに誤解を振りまくデータを誤解したまま公表するのはやめていただきたい。
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