国際政治

核兵器を脱神秘化する

核をめぐる議論では、一方の極には「一定水準の国は核を持っていた方が世界は安定する」という核武装論、もう一方の極には「核兵器などない方が平和」という核廃絶論があり、その間のバランスをとるようなところに多くの議論は位置している。そして、これらの双方に挑戦するかのように、北朝鮮などのいくつかの国家は、既存の制度を破って核保有をすることをもくろみ、または実行している。
これらの議論の共通の前提にあるのは「核兵器は極めて恐ろしいものだ」という「畏怖の念」である。これがあるために、核兵器は抑止として機能するし、また同時に廃絶されるべきものだとされる。いくつかの独裁的な国家や軍事政権が核保有に熱心なのも、それが脅しのカードとして極めて有効なものだからである。
しかし、一歩引いて考えてみよう。本当に核兵器は恐ろしく思うべき対象なのだろうか。いやもちろん実際に使用された場合に甚大な被害が出るというのは事実であるが、問題は「どういうときに使用されうるのか」ということである。つまり、核兵器が軍事的な戦略としてどういうときに有効に使用しうるか、ということである。

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チュニジア、エジプト、あるいは民主化の波は来るのか

チュニジアで大統領が追い出され、エジプトでもムバラク大統領への批判が高まっていることもあり、「アラブ・アフリカ圏の抑圧的体制下に民主化の波か」という見方や機運も高まってきているようである。だが、そういう単純な見方ではいくつも見落とされている点があるように思う。

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原爆と核廃絶

原爆の日になると、必ず核兵器批判が出てくる。例えば

被爆地・長崎は9日、65回目の「原爆の日」を迎えた。爆心地に近い長崎市松山町の平和公園では、長崎原爆犠牲者を慰霊する平和祈念式典が開かれ、 被爆者や遺族ら約6000人が参列。原爆投下時刻の午前11時2分、全員で1分間黙とうし、鎮魂と平和への思いを新たにした。「長崎平和宣言」で田上富 久・長崎市長は、今年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で核軍縮交渉などの期限設定を核保有国が退けたことを強く批判。「核保有国の指導者の皆さん、『核兵器のない世界』への努力を踏みにじらないでください」と世界に訴えた。
 田上市長は「核保有国が核軍縮に誠実に取り組まなければ、それに反発して、新たな核保有国が現れて、世界は核拡散の危機に直面する」と指摘。5日に長崎を初訪問した潘基文(バンキムン)・国連事務総長が国連加盟国に呼びかける「核兵器禁止条約」への強い支持を表明し、核兵器廃絶への決意をアピールした。
 また、被爆65年にして存在が明確になった「核密約」に触れ、「非核三原則を形骸(けいがい)化してきた」として過去の政府の対応に強い不信感を表明。NPT未加盟の核保有国インドとの原子力協定交渉も「NPT体制を空洞化させ、容認できない」と批判した。
 その上で日本政府に▽非核三原則法制化への着手▽核の傘に頼らない安全保障を実現するための「北東アジア非核兵器地帯」構想の提案--を求め、被爆国として国際社会で独自のリーダーシップを発揮するよう促した。
「長崎原爆の日:65年の祈り 核廃絶の努力、踏みにじらないで 市長、保有国に訴え」

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土佐弘之『安全保障という逆説』~国家安全保障の制度的思考に意味はあるか

さて前の記事でも取り上げた土佐弘之『安全保障という逆説』についてだが、要するに本書の要旨は「国家という制度的思考そのものが国際政治の本質を見えなくしており、制度的思考そのものを乗り越えることが必要だ」ということであろう。

さてではなぜ国家という制度的思考が無効化してくるのだろうか。筆者の主張を簡潔にまとめると
・主権国家の枠組みに収まらないアクターが増加している
・主権国家の枠組みから排除された人々への配慮が全くない

という二点に収斂するだろう。この二つの主張は、本書に限らず、多くの国家批判で取り上げられている論拠であろう。

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辺野古移設反対はいいが現実的対案はあるのだろうか

名護市長選で県外移設派の候補者が当選したらしい(毎日jp

いや、別にいいけど対案として果たして何があるのだろうか。もちろんアメリカが無条件に基地を撤収するとかそういう案を呑むのなら理想であるが、そのような理想が現実される可能性は果たしてどれくらいあるのだろうか。現実的対案を提示できなかったら移設は行われないのだから、結局普天間に基地が残るだけであろう。

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普天間飛行場移設問題

普天間移設問題で以下のようなニュースがあった。


普天間移設「首相は辺野古以外」と防衛相

北沢防衛相は12日夕、長野市内で開かれた自身の就任祝賀会であいさつし、沖縄の米軍普天間飛行場移設問題について、「鳩山首相が目指しているのは、日米で合意した(沖縄県名護市)辺野古に新しいものをつくりたくないという沖縄の人たちの思いを大切にした新しい案をつくることだろうと思う」と述べ、首相が 現行の移設案である辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部以外の移設先検討も含めて現行案を見直すとの見通しを示した。

 その上で、米側との協議に入るのが望ましいとの考えを示した。

 北沢氏は辺野古への移設について、「沖縄の県議会や県民世論(の多数)は反対で、知事が埋め立て工事の手続きをしても、県議会が不信任案を出す。鳩山内閣がリスクを取って決断しても、工事に入れないという状況があるから、我々が悩んでいる一番の動きはここにある」と指摘した。
読売新聞




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オバマのノーベル平和賞と核廃絶について

オバマがノーベル平和賞を受賞した。CNNではいろいろな受賞理由が書かれているが、日本では核廃絶の話がやたら取り上げられている。

さて、核廃絶の話といえばプラハでの演説なんだけど、演説全文(日本語訳)見てみてもオバマはそういう平和主義者なのか怪しく思える。

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オバマは国際協調主義なのか?

オバマ大統領が単独行動主義を批判して国際協調主義へのシフトを演説したらしい。

ただ、このニュースによると

オバマ大統領は、ブッシュ前政権の外交政策が国連を軽視した単独行動主義的であったと批判する一方、現在の米国の外交政策が国連を重視する国際協調主義 に変わったことを強調。米国一国だけでは問題を解決することができないことを指摘しながら、地球規模の課題への各国の責任分担を求めた。

確かにこれは単独行動主義ではないのだろうが、かといって国際協調主義なのかと言われると疑問が残る。

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鳩山の二酸化炭素25%削減と、国際社会における「倫理」

鳩山は、2020年に二酸化炭素90年比25%減を掲げているらしい。

いまだに日本に不利な90年比という基準を用いているのはさておき、この行動の意味がわからない。

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核保有の議論について

読売新聞によると

 自民党の7日の役員連絡会で坂本剛二組織本部長が北朝鮮のミサイル発射に対し、日本も核保有すべきだと述べた。

 坂本氏は「向こう(北朝鮮)は核を保有している。日本も『核を保有する』と言ってもいいのではないか」と述べ、国連脱退にも言及したという。

 坂本氏はその後、記者団に、「日本が核武装も国連脱退もできないことはわかっている。ただ、北朝鮮に強く臨むため、例え話をした」と説明した。

 これに対し自民党の山崎拓・前副総裁は山崎派のパーティーで、「『日本も核武装して北朝鮮に対抗しよう』という意見が、公然と党の会議で言われることは非常に憂慮すべきだ。極端に言えば人類を破滅に導く議論だ」と強く批判した。

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